湘南動物霊堂の由来

鎌倉衛生時報 1994年2月号より

 鎌倉材木座の光明寺に、動物のお墓(納骨堂)があるのを皆様ご存知でしょうか。昭和39年にこの納骨堂が造営されてすでに29年の歳月が流れました。その間には2頭あるいは3頭の愛犬愛猫のお骨を納められている方も多数おいでになります。

 この納骨堂の前身は、35年ほど前(昭和35年)に逗子市の山中の寂しい共同墓地の一隅にありました。逗子市よりワンチャンクラブという団体が借用し、飼い主もいない交通事故などで落命した犬猫の共同墓地として使用されていました。これを湘南獣医師会が受け継ぎましたが、そこで墓地を続けるにはいかにも寂しく、そのうえ雨が少しでも降ると足元が泥だらけになってしまう有様なので、昭和38年には新たな場所を探すことになりました。

 多くの寺院に打診をして回り、その一方では県当局、鎌倉市、逗子市、葉山町、県獣医師会、さらには関係薬品会社を訪ね、衛生的見地と動物愛護の立場から納骨堂設立の主旨を説明し、協力を得ることができました。しかし、当時はまだ動物供養を理解してもらえず、条件を満たす寺院探しに走り回り、季節が春から秋に変わってもまだ場所が決まらず、あわただしく日々は過ぎて行きました。

 そうした折、獣医師会員の親戚に光明寺の世話人がいることが分かり、その人に実情を説明し、お寺の執事長に話を伝えてもらうことができました。昭和39年の松が取れて幾日もしないうちに、光明寺から承諾したとの返事があり、指定された日時に期待に胸膨らまして訪ねました。当日はすでに執事長は巻尺などを持ち、納骨堂建立の予定地にゴム長姿で待っておられました。

 我々との話し合いも談笑のうちに順調に決まり、やっと念願がかない、肩の荷が降りた思いでした。そして獣医師会の全体会議を開き、全員一致の賛成を得て場所は光明寺に決定しました。そして、納骨堂の建築設計は安田紫気郎氏にお願いすることになりました。

 工事については、現在もさまざまな相談に乗っていただき、当時鎌倉市議会議員をされていた大木佐宗氏に仲介を依頼し、工期は3月末までに終えることとなりました。しかし、その年は雨が多く、関係者は短い工期に大変苦労しながら予定の3月31日を迎えました。

 その日は雲一つない晴天で、境内の桜も今日の日を祝うかのように咲きほこり、工事関係者や市町の担当者など尽力された方々を招待し、盛大な落成式を挙行することができました。その日から多くの人々を慰めた数多くの動物たちがそこで安らかに眠っています。

 霊堂落成以来今日まで、毎月10日の納骨式と毎年彼岸に行われる春秋2回の慰霊祭は、湘南獣医師会員によって組織されている湘南動物霊堂奉賛会が日々の霊堂管理と共に年間行事として行われてきました。そして、お預かりしましたお骨は1年以上経ちましたら地下のカロートに合祀されます。これからも亡き動物たちの慰霊は、湘南獣医師会の続く限りお約束いたします。

 慰霊祭は多少の変動はございますが、春秋とも彼岸直後の日曜日が予定されています。しばらく疎遠になられたご家族の方々もお時間がございましたらお問い合わせください。ご案内させていただきます。皆様の御参拝をお待ちしております。

昭和39年造営の初代動物霊堂(2001年撮影)

現在よりも鐘楼寄りにありました。

光明寺様の境内大改修に伴い、平成14年(2002年)に現在の山門脇に移設されました。
移設に当たっては、それまでに納められていたお骨もすべて現在の動物霊堂に移されています。

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